業界史の、ある1点をみつめれば特異な存在だった新興ブランドが、やがて規模が大きくなるにつれ、特異性が失われていく場合があります。量産化・規格化されすぎることで没個性にも平板化にも向かっていく。
そうなると今度は、豆や焙煎法、陶器やインテリア、そしてサウンドスケープにいたるまで、店主の好みが横溢している小さなカフェにこそ、さまざまな創意や物語を発見することが少なくありません。また店主の人柄が慕われ、そこが仲間や地域のやわらかい交流場所にもなっていて、一定の社会性をそなえていたりもします。
というより、カフェとはもともと、そういう場所でした。17~18世紀、ロンドンのカフェから新聞、雑誌、保険、結社、政党など、その後の情報社会を特徴づける、新たな観念や媒体や制度が生まれていくことになります。カフェはただの飲食の場にとどまらない、時代形成の震源地でした。
関連情報:
◉ 2人のイノベーター vol.1 (ARCHIPELAGOs 00106)
◉ Hegel's Book (ヘーゲルの本) (ARCHIPELAGOs 00045)
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