00134 オテル・リッツ・パリ
 

 かつてビジネスはシンプルでした。顧客は、もっぱら合理的な消費行動をするものと想定されていたからです。たとえば、「品質が同じなら、消費者は安い方に価値を感じる」という前提でビジネスを進めることができました。いまでも製造業や食品スーパーなどに見られる信条です。

 ところがナイキのシューズは、プロや体育会のアスリートが使うと「わりに早くぼろぼろになる」といわれることがあります。品質という面からすれば、かならずしも一流とはいいがたいようです。にもかかわらず、彼らは価格競争を上手に回避して、大勢のファンを抱えています。品質が悪くても構わない、という意味ではありません。もはや価格と品質より、別の次元に「価値」を求める傾向が現れているということです。

 似たようなことが、イタリア、アマルフィー海岸のホテルやパリのリッツにも見られます。ハード面の品質からすると、よくいえばヴィンテージ化しており、別の言い方をすれば割に使い古され、年季が入っていたりするのですが、泊まってみたいと願う人びとがあとをたちません。


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