レストランでは、たとえ個室で小さな声で話したとしても、つねに見られたり、話を聞かれたりする危険をともなうものだ。その点、ラ・トゥルネル通りの「シュヴァル・ルージュ」はうってつけだった。この店はあまりに平凡で、目を惹くような夕食を出すこともなかったが、それでもバルザック(1799-1850)らがここにやってくるのは、秘密を漏らしそうな人物から目撃されたり、話を聞かれたりしたくないからだった。この店は、価格でも料理の味でも接客でもなく、「夜の7時にそこに行けば、誰にも会うことがない」というベネフィットのために選ばれていたのだった。いったい「 顧客から見た価値 」とは何なのか、顧客にとっての “Feel-good factors” とは何なのか。
関連情報:
◉ エンパワーメント (ARCHIPELAGOs 00004)
◉ 方法としての「対話」 (ARCHIPELAGOs 00127)
◉ Balzacの人間観 (ARCHIPELAGOs 00105)
◉ 「価値」概念の再考 (ARCHIPELAGOs 00076)
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